「壁の中」から

むかしblogtribeにあったやつのアーカイブ

隠蔽イデオロギーの逆説――青木秀男編著「場所をあけろ!」

場所をあけろ!―寄せ場・ホームレスの社会学作者: 青木秀男,中根光敏,狩谷あゆみ,田巻松雄,西沢晃彦,山口恵子出版社/メーカー: 松籟社発売日: 1999/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見るこの本は副題に掲げられたとおり、野宿…

「厳正なる公平性」という不平等――「〈野宿者襲撃〉論」生田武志・2

●もうひとつの視点最初にも書いたが、この本の趣旨に賛同した上でそれでも無視してはならないのは、以下のような視点だ。なぜ、だれもホームレス生活の豊かさを語らないのか? 野宿者支援として、彼らを自立させ、野宿生活から脱出するための支援というのは…

過剰適応の症状としての暴力――「〈野宿者襲撃〉論」生田武志・1

「野宿者襲撃」論作者: 生田武志出版社/メーカー: 人文書院発売日: 2005/12/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 93回この商品を含むブログ (45件) を見る個人的に去年読んだ非小説本のベストは酒井隆史「暴力の哲学」だった。気が早いが今年は生田武志「…

際限のない反復――古井由吉「辻」

辻作者: 古井由吉出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/01/26メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (28件) を見る待望の新刊とはいえ、発売日の27に棚に並んだ直後のを買ったりした自分はどうかと思った。読んでみるとまたいつもの通りの生・…

小島信夫「残光」と新潮2006年2月号

小島信夫が久々に長篇を発表したので、それと前から興味のあった青木淳悟目当てに久々に「新潮」を買った。新潮2006年2月号 群像と違って新潮はAmazonなどで取り扱っていないようなので新潮社のサイトから画像をリンク。上のリンクが切れてたらたぶんここか…

笙野頼子「だいにっほん、おんたこめいわく史」追記・「群像」2006年1月号

二回目は画像サイズを大きくして載せてみました。群像 2006年 01月号出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/12/07メディア: 雑誌 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る●笙野頼子「だいにっほん、おんたこめいわく史」追記前回の記事に追記しようと…

笙野頼子「だいにっほん、おんたこめいわく史」

●笙野頼子「だいにっほん、おんたこめいわく史」(「群像」2006年1月号掲載)群像 2006年 01月号出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/12/07メディア: 雑誌 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る(27日改訂)既刊はすべて一通り読むことができた…

ラファティのイースターワインで悪魔が舟歌

まえに書いたとおり、ラファティの既訳長篇を読んでみた。 サンリオSF文庫の「悪魔は死んだ」、「イースターワインに到着」と、ついでに国書刊行会の未来の文学シリーズ第一期最終巻の「宇宙舟歌」まで一気に読んだ。 簡潔に感想を書くと、サンリオの二つは…

再度「Gunslinger Girl」について・3

承前私からすれば、夏葉さんや幾人かの人の言うことは、作品事実にのみ即していて、それがどう語られているか、という点についてを無視しているように見えます。しかし、作品を読むということは、何が書かれているかも重要ですか、それと同じほどにどう書か…

再度「Gunslinger Girl」について・2

前回はわりとその前の記事の補足に終始したので、今回、以下コメントについて応答しながら具体的に作品にそって私のガンスリ評の根拠を詳説したいと思います。http://d.hatena.ne.jp/K_NATSUBA/20060104ここでのコメントで、読者批判がしたいのでは?とかか…

再度「Gunslinger Girl」について・1

この漫画をはじめて読んだのは確か連載第二話目のリコのエピソードで、電撃大王に載っているのを某人に読めといわれたからだった。第一印象からいわくいいがたい違和感を覚えた。その次は確かフランカがスペイン広場でヘンリエッタと遭遇するエピソードで、…

SFとか

●バラード「終着の浜辺」創元SF文庫終着の浜辺 (創元SF文庫)作者: J・G バラード,J.G. Ballard,伊藤哲出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2005/10メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 20回この商品を含むブログ (34件) を見る突如復刊されたバラードの短篇集…

廃墟探索記二篇

9月と10月に立て続けに廃墟探索を敢行したのだけれど、フリマもあって記事にするのを放置していたのをアップしました。写真が多くてブログにアップするのは面倒なので、幻視社のサイトの方にアップしています。リンク先に本文があるので、そこから行けます。…

メフィスト賞の人とか

あんまり更新しないのもあれなので、ちょっとまえに読んだ本の感想を並べてみます。否定的なもんばっかりですが。●森博嗣「すべてがFになる」すべてがFになる (講談社文庫)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 1998/12/11メディア: 文庫購入: 16人 …

第四回文学フリマ参加報告

今回はデジカメを忘れた私にかわって、エンドケイプさん撮影の写真を使わせて貰っています。注意! 今回の「幻視社 第一号」において印刷ミスで乱丁が発生しています。 「魔法少女テロルちゃん」におきまして、1、2ページが3、4ページの次に来てしまって…

第四回文学フリマ

今年の第四回文学フリマに、幻視社として参加します。 フリマ公式サイト注意! 今回印刷ミスで乱丁が発生しています。 「魔法少女テロルちゃん」におきまして、1、2ページが3、4ページの次に来てしまっています。 35ページからの上記作品においては3…

“少女”の合目的的利用法 ―Gunslinger Girl批判―

(この記事についての批判とそれに応えた補足記事があります。 再度「Gunslinger Girl」について・1)GUNSLINGER GIRL 5 (電撃コミックス)作者: 相田裕出版社/メーカー: KADOKAWA(アスキー・メディアワ)発売日: 2005/05/27メディア: コミック購入: 2人 クリ…

「文学に意味はないというお前に意味はない。オレが文学だ。オレこそが「批評」だ。純文学作家笙野頼子」

徹底抗戦!文士の森作者: 笙野頼子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2005/06/21メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 31回この商品を含むブログ (43件) を見る●私的言語の戦闘的保持十四年にわたる「純文学論争」にまつわる経緯をまとめ、その間に書かれ…

笙野頼子の絶対的自己肯定

金毘羅作者: 笙野頼子出版社/メーカー: 集英社発売日: 2004/10メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 20回この商品を含むブログ (76件) を見る「水晶内制度」が出たと思ったら、ほぼ一年後に出たいまのところの最新長篇。長篇をこの短いスパンで出すというの…

笙野頼子の変則名調子

前回の投稿について、やはり「ヒステリー」という言葉を使うのは辞めた方がいいとは思うのだが、女性の言論をヒステリーとして抑圧する状況に抗して用いられる戦略として、「ヒステリー」という言葉を使っているのだということくらいは読みとって貰えるだろ…

笙野頼子の「ヒステリー」としての文体

水晶内制度作者: 笙野頼子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2003/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 24回この商品を含むブログ (55件) を見る笙野頼子にそれが欠けているということが最大の美点になっているものは“上品さ”だと思う。笙野頼子は、その仕…

笙野頼子の神なき世界

S倉迷妄通信作者: 笙野頼子出版社/メーカー: 集英社発売日: 2002/09/05メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (10件) を見るこれは前作「森娘」以上に難物だった。読み終えてみても、飲み込めた、という気がしない。「森娘」に比べれば、文章…

笙野頼子のドライブする文体

笙野頼子「幽界森娘異聞」幽界森娘異聞作者: 笙野頼子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2001/07メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (26件) を見るこの本はずいぶん前に買っていたのだが、肝心の森茉莉をほとんど読んでいなかった時期だった…

最近読んだ本 森茉莉、カート・ヴォネガット

甘い蜜の部屋 (ちくま文庫)作者: 森茉莉出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1996/12/01メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 29回この商品を含むブログ (63件) を見る●森茉莉「甘い蜜の部屋」「贅沢貧乏」「恋人たちの森」しか読んでいないので、長篇を。 てっ…

最近読んだ本 SFマガジン、石川淳

●SFマガジン 2005年4月号 通巻588号 クリストファー・プリーストの短篇、飛浩隆の長篇序章、イーガンのノヴェラ(中篇)、他にもウルフ、ウィリス、神林長平、と今年度「ベストSF」上位作家の作品集。このラインナップに、普段買わないSFマガジンをつい買っ…

廃村と甲府2

で、ここで入ったファミレスが、ものすごい雰囲気だった。店はガストで、ただのチェーンファミレスなのだが―田舎、というと失礼なので地方都市と呼んでおくが―地方都市の人間環境がどういうものか如実に見た思いだった。店は普通、しかし、休日の夜と言うこ…

廃村と甲府1

ブログらしく、旅行記でも。先日、長野まで旅行に行った。旅行、というよりも「腐った田舎」が大好きだ、という馬(このブログのどっかにコメントつけてる)の発案になる行き先不定のカードライブであって、どこに行くわけでもなく、いつ帰るかも決っていな…

バラードの二十世紀のアメリカ

●「22世紀のコロンブス」22世紀のコロンブス (1982年) (World SF)作者: J.G.バラード,南山宏出版社/メーカー: 集英社発売日: 1982/07メディア: ?この商品を含むブログ (1件) を見る バラードの本のうち、何冊かはかなりレアな代物で、古書店で万単位の値が付…

バラードの結晶の時間

バラードの短篇でいえば、「ヴァーミリオン・サンズ」はむしろ傍流にカテゴライズされるかも知れない。彼の短篇は、SFを換骨奪胎したアンチSFとしてのSFや、宇宙という新次元においての人間精神の不気味さを描くものや、時間や鉱物を主題にした幻想小説など…

「ヴァーミリオン・サンズ」散策記

昨日の補遺。(システムのバージョンアップの結果、一万文字以内(全角文字なら五千字計算)という一エントリの字数制限がついたため分割)●「ヴァーミリオン・サンズ」でプログレヴァーミリオン・サンズまたはVermilion Sandsで検索すると面白いものが出て…