「壁の中」から

むかしblogtribeにあったやつのアーカイブ

「ヴァーミリオン・サンズ」散策記

昨日の補遺。(システムのバージョンアップの結果、一万文字以内(全角文字なら五千字計算)という一エントリの字数制限がついたため分割)

●「ヴァーミリオン・サンズ」でプログレ

ヴァーミリオン・サンズまたはVermilion Sandsで検索すると面白いものが出てくる。

まず、日本にはVermilion Sandsというプログレッシブ・ロックバンドがある。知らないバンド。曲の一つに「CORAL D THE CLOUD SCULPTORS」というそのものずばりのものがある。ちょっと聴いてみたら、キーボードサウンドが特徴的な、疾走感のあるインストゥルメンタルという感じ。他に「時の灰」という曲があってこれは試聴してみたらウィンドウに「Ashes Of The Time」と出た。もちろん「時の声/The Voices Of Time」のもじりだろう。曲は、叙情的な女性ヴォーカルの歌メロから、キーボード等の激しいインストパートに入るらしい所で切れている。プログレらしい、転調しまくりの曲。

八十年代位から活躍しているらしい(アルバムが二枚しかないみたいだけど)のだけれど、このウェブサイトを見たらヴォーカルの方が半年ほど前に亡くなられたらしい。私が何か言うこともないだろうけど、合掌。

あと、もうひとつ日本にはVermilion Sandsというバンドがあるらしく、公式サイトのようなものが出てくるのだけれど、なんだかよくわからなかった。


もうひとつ、そのものずばり「Vermilion Sands」という曲があった。The Bugglesの曲。このバグルズ――トレヴァー・ホーンジェフ・ダウンズの二人組ユニットは、80年代に「ラジオスターの悲劇/Video Killed The Radio Star」という曲で大ヒットになったとのこと。ちょうど私が生まれる頃の話。テレビの台頭によってラジオDJが殺される、という皮肉な歌である。

Age of Plastic

Age of Plastic

この元曲はあまり知らないが、たいそう有名な曲らしくインターネットでパロディFLASHが見られる。
「Internet killed The Video Star」
よくできたパロディだ。元曲は上のジャケット画像のリンク先で少し聴ける。

モダン・レコーディングの冒険

モダン・レコーディングの冒険

で、「Vermilion Sands」の方だけれど、上掲の彼ら二枚目のアルバム「Adventures In Modern Recording/モダン・レコーディングの冒険」の三曲目である。CDはそのうち探すとして、歌詞は以下。
My heart is an alligator
Better watch your step watch your step
This heat is an incubator
Make a diamond sweat wanna bet
Live life like you're flying solo
Never in the net in the net
Dancing in silence the orchestra late
In the Essoldo or down by the lake
I don't care
Take me to Vermilion Sands
Hold me in familiar hands
Take me to Vermilion Sands
Sandyacht on a thermal roller
We were never there never there
Live life like you're flying solo
Never in the air in the air
Dancing in silence the orchestra late
In the Essoldo or down by the lake
I don't care
Take me to Vermilion Sands
Hold me in familiar hands
Take me to Vermilion Sands
My heart is an alligator
Better watch your step watch your step
This heat is an incubator
Make a diamond sweat wanna bet
Take me to Vermilion Sands
Hold me in familiar hands
Take me to Vermilion Sands
「私の心は鰐」?から、「ヴァーミリオン・サンズへつれていって」と歌われている。所々にバラードランドのアイテムを鏤めた、いかにもバラード好きの所業といったところ。これを、「朱色の砂」と訳すのは明らかにミスだと思うのだけれど、訳者がバラードなど知らなかったということなのだろう。曲は聴いてみたい。そもそも、手に入らない可能性が高いが。(海外は歌詞がだいたいネットに公開されているところがすごい。そもそも音源に歌詞をつけない風習のせいとも聞いたけれど)

これを紹介しているSFのサイトがあった。SF&ミステリー音盤同乗記の第三十回転調二人羽織〜「モダン・レコーディングの冒険」バグルズ。ミステリとSFのオンライン古書店の一コーナー。「そもそも「ラジオ・スター〜」からして、バラードの短編「音響清掃」(「時の声」東京創元社 創元SF文庫収録)にインスパイアされたものだという」という。

ちなみに、このアルバムに入っている「アイ・アム・ア・カメラ」という曲はイギリスのプログレバンド、YES/イエスの「DRAMA/ドラマ」にも収録されている「In To The Lens」のセルフカバーらしいバグルズ版は未聴だが、「DRAMA」での「In To The Lens」は、トレヴァー・ホーンの口癖なのか、meをマと発音するためサビの部分の歌詞が「アイアムアカマラ、カマラカマラ」という不思議なフレーズに聞えるのが面白い。このアルバム自体はイエスの元々のヴォーカル、ジョン・アンダーソンが唯一歌っていない(脱退したが、この次で復帰)アルバムなので、ファンには微妙な位置づけのようだけれど、内容自体は結構いいと思う。個人的にはこれらの曲のアンダーソンバージョンを聴いてみたい。特に「Machine Messiah」。あり得ないか。

他にもあるかも知れない。


小説では、バラードに影響を受けて自ら「ヴァーミリオン・サンズ」のような小説を書いた作家がいる、と解説で書かれている。ひとりは、アメリカの作家エド・ブライアントで、1976年に「シナバー」という長篇を書いており、それが赤い砂の未来都市であるらしい。マイクル・コニイ(サンリオSF文庫からいくつか邦訳が出ている)もバラードの影響が強い短篇連作を書き、リー・キロウという女性作家が「イーデンの向性彫刻」というタイトルそのものがバラード的な短篇を書いている。ただ、どの作品も未訳か、SFマガジンなどに訳出された程度で、入手は困難だろう。

さらに、バラードの影響を受けた作家、と話を広げてしまうなら話は別だろう。海外でのそういう文脈は私はあまり知らないが、日本だけにしても、川上弘美笙野頼子らがディック、バラードあたりを読んできている小説家だというのは有名な話であるし、“日本のバラード”などと評される日野啓三の諸作もある。ただ、日野啓三のバラードランド的小説群に対しては、私は好きになれないんだけれども。その話は後で追加する記事に書きます。


●追記
エスのオフィシャルっぽいサイト、イエスミュージアムの下記のページから、バグルズのラジオスターの悲劇のプロモがダウンロードできるようになっています。三分以上見られます。
http://yesmuseum.org/video/
一番下までスクロールしてください。
ASIA/エイジアのGoのプロモもあって、Astraのジャケのイラストをイメージした変なコスチュームの女性が逃げ回る妙な映像が見られます。
あと、サウスパークの劇中なぜかエイジアのHeat Of The Momentを合唱する異色の映像が面白い。

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