「壁の中」から

むかしblogtribeにあったやつのアーカイブ

books

四冊の「日本語の歴史」

●山口仲美「日本語の歴史」岩波新書 日本語の歴史 (岩波新書)作者: 山口仲美出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2006/05/19メディア: 新書購入: 1人 クリック: 22回この商品を含むブログ (60件) を見る前回の「日本書紀の謎を解く」を読んで、上代日本語とか…

古代史・記紀成立論の二冊

●森博達「日本書紀の謎を解く」中公新書 日本書紀の謎を解く―述作者は誰か (中公新書)作者: 森博達出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1999/10/01メディア: 新書購入: 4人 クリック: 15回この商品を含むブログ (25件) を見るここ半年ほどのあいだに読んだ…

近現代史と中世史についての二冊

また間が空いてしまいました。三ヶ月ぶり。感想を書きたい本が溜まってしまっているのに加えて笙野頼子関連も「成田参拝」や「現代思想」などいくつも新しいものが出ていてそっちも溜まってしまっています。以下に紹介する本なんて、十月には読んでいた本だ…

笙野頼子「だいにっほん、ろんちくおげれつ記」群像2006年8月号

群像 2006年 08月号 [雑誌]出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/07/07メディア: 雑誌この商品を含むブログ (3件) を見る群像1月号に発表された「だいにっほん、おんたこめいわく史」の七ヶ月ぶりの続篇。だいたい三百枚弱。前作の狂騒的な文体とはうってか…

明治の宗教政策――安丸良夫「神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈」

●安丸良夫「神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈」岩波新書神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈 (岩波新書 黄版 103)作者: 安丸良夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1979/11/20メディア: 新書購入: 9人 クリック: 56回この商品を含むブログ (37件) を見る義…

日本の中世についての三冊

最近読んだ本がちょうどよく日本の中世について、宗教、政治、法それぞれの角度から見たものだったので、まとめて紹介。●佐藤弘夫「神国日本」ちくま新書神国日本 (ちくま新書)作者: 佐藤弘夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/04メディア: 新書購入: 2…

パソコンが壊れたりして更新が滞りすぎていた間に読んだ本とか。

ところで、笙野頼子の「徹底抗戦! 文士の森」の記事に、小谷野敦様からのコメントをいただき、少々訂正しました。ブログの方でも私の記事にリンクしておられるので、当人に間違いないようです。http://d.hatena.ne.jp/junjun1965/20050710小谷野様による笙…

死に過剰な意味を与えようとする「死の哲学」の批判のために――小泉義之「病いの哲学」

病いの哲学 (ちくま新書)作者: 小泉義之出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/04メディア: 新書購入: 5人 クリック: 43回この商品を含むブログ (51件) を見る●病いの哲学「病いの哲学」といわれてもぴんとこないと思う。なので、著者が「病いの哲学」に対…

女たちの楽園――J・G・バラード「楽園への疾走」

楽園への疾走 (海外文学セレクション)作者: J・G・バラード,増田まもる出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2006/04/22メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (18件) を見るバラードはたまに集大成というか自己模倣というか、それまで扱って…

「普通」の男とは誰か――笙野頼子「絶叫師タコグルメと百人の「普通」の男」・2

絶叫師タコグルメと百人の「普通」の男作者: 笙野頼子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2006/04/21メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 28回この商品を含むブログ (34件) を見る私は知っている。最悪のこばと会よりも凶悪なもの、それはごく普通の善良…

移民の歌ヨーデル風電気ノコギリ演奏――笙野頼子「説教師カニバットと百人の危ない美女」

説教師カニバットと百人の危ない美女作者: 笙野頼子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1999/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 8回この商品を含むブログ (19件) を見るタコグルメ記事を書くときに読み返したのだけれど、ちょっと気になったのでカニ…

「私」不在の無責任共同体――笙野頼子「絶叫師タコグルメと百人の「普通」の男」

絶叫師タコグルメと百人の「普通」の男作者: 笙野頼子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2006/04/21メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 28回この商品を含むブログ (34件) を見る一言でいえば、これは、「だいにっほん、おんたこめいわく史」の前哨戦だ…

「私」の反体制――笙野頼子「羽田発小樽着、苦の内の自由」

すばる 2006年 04月号出版社/メーカー: 集英社発売日: 2006/03/06メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る木村カナさんが用意してくれた掲示板のあるツリーで予告しておいてからずいぶん時間がたってしまったけれど、すばる2006年4月号掲載、笙野頼…

国家による宗教の利用法・あるいは自我の発生史――義江彰夫「神仏習合」

神仏習合 (岩波新書)作者: 義江彰夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1996/07/22メディア: 新書購入: 6人 クリック: 68回この商品を含むブログ (30件) を見る笙野頼子の「金毘羅文学論序説」や近作「羽田発小樽着 苦の内の自由」でも参照されているので読ん…

生きることが肯定される条件・1――立岩真也「ALS 不動の身体と息する機械」

ALS 不動の身体と息する機械作者: 立岩真也出版社/メーカー: 医学書院発売日: 2004/11/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (23件) を見るまえにちょっと触れた、ALS=筋萎縮性側索硬化症(Amytrophic Lateral Sclerosis)をあ…

生きることが肯定される条件・2――立岩真也「ALS 不動の身体と息する機械」

●生に誰が価値を付けるのか患者の死への傾きを促す要素として、QOLがもちいられることもあるという。詳しくは立岩氏のこの文章を読んでほしい。「大切で危ないQOL」(上掲ブログ経由)。勝手にまとめると、医療から提供されるサービスに対して、患者の側…

暴力から見た「国家」――萱野稔人「国家とはなにか」

『国家とはなにか』作者: 萱野稔人出版社/メーカー: 以文社発売日: 2005/06/17メディア: 単行本購入: 12人 クリック: 142回この商品を含むブログ (118件) を見る国家とはなにか、を原理的に分析するきわめて理論的な本。だけれど、よく整理されていてとても…

働かない者は人間ではない(?)――内田樹「不快という貨幣」

この記事は前回の続きでもあるので是非そちらを参照してください。●俗流若者論の構図さて、本田由紀・内藤朝雄・後藤和智「「ニート」って言うな!」で本田氏は、世に氾濫するニート悪玉論の多くが、事実を無視した青少年へのネガティヴキャンペーンでしかな…

いま、大人たちが危ない!――本田由紀・内藤朝雄・後藤和智「「ニート」って言うな!」

「ニート」って言うな! (光文社新書)作者: 本田由紀,内藤朝雄,後藤和智出版社/メーカー: 光文社発売日: 2006/01/17メディア: 新書購入: 17人 クリック: 420回この商品を含むブログ (286件) を見る一般に「ニート」という言葉でイメージされる人間像とはどん…

隠蔽イデオロギーの逆説――青木秀男編著「場所をあけろ!」

場所をあけろ!―寄せ場・ホームレスの社会学作者: 青木秀男,中根光敏,狩谷あゆみ,田巻松雄,西沢晃彦,山口恵子出版社/メーカー: 松籟社発売日: 1999/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見るこの本は副題に掲げられたとおり、野宿…

「厳正なる公平性」という不平等――「〈野宿者襲撃〉論」生田武志・2

●もうひとつの視点最初にも書いたが、この本の趣旨に賛同した上でそれでも無視してはならないのは、以下のような視点だ。なぜ、だれもホームレス生活の豊かさを語らないのか? 野宿者支援として、彼らを自立させ、野宿生活から脱出するための支援というのは…

過剰適応の症状としての暴力――「〈野宿者襲撃〉論」生田武志・1

「野宿者襲撃」論作者: 生田武志出版社/メーカー: 人文書院発売日: 2005/12/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 93回この商品を含むブログ (45件) を見る個人的に去年読んだ非小説本のベストは酒井隆史「暴力の哲学」だった。気が早いが今年は生田武志「…

際限のない反復――古井由吉「辻」

辻作者: 古井由吉出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/01/26メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (28件) を見る待望の新刊とはいえ、発売日の27に棚に並んだ直後のを買ったりした自分はどうかと思った。読んでみるとまたいつもの通りの生・…

小島信夫「残光」と新潮2006年2月号

小島信夫が久々に長篇を発表したので、それと前から興味のあった青木淳悟目当てに久々に「新潮」を買った。新潮2006年2月号 群像と違って新潮はAmazonなどで取り扱っていないようなので新潮社のサイトから画像をリンク。上のリンクが切れてたらたぶんここか…

笙野頼子「だいにっほん、おんたこめいわく史」追記・「群像」2006年1月号

二回目は画像サイズを大きくして載せてみました。群像 2006年 01月号出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/12/07メディア: 雑誌 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る●笙野頼子「だいにっほん、おんたこめいわく史」追記前回の記事に追記しようと…

笙野頼子「だいにっほん、おんたこめいわく史」

●笙野頼子「だいにっほん、おんたこめいわく史」(「群像」2006年1月号掲載)群像 2006年 01月号出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/12/07メディア: 雑誌 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る(27日改訂)既刊はすべて一通り読むことができた…

ラファティのイースターワインで悪魔が舟歌

まえに書いたとおり、ラファティの既訳長篇を読んでみた。 サンリオSF文庫の「悪魔は死んだ」、「イースターワインに到着」と、ついでに国書刊行会の未来の文学シリーズ第一期最終巻の「宇宙舟歌」まで一気に読んだ。 簡潔に感想を書くと、サンリオの二つは…

再度「Gunslinger Girl」について・3

承前私からすれば、夏葉さんや幾人かの人の言うことは、作品事実にのみ即していて、それがどう語られているか、という点についてを無視しているように見えます。しかし、作品を読むということは、何が書かれているかも重要ですか、それと同じほどにどう書か…

再度「Gunslinger Girl」について・2

前回はわりとその前の記事の補足に終始したので、今回、以下コメントについて応答しながら具体的に作品にそって私のガンスリ評の根拠を詳説したいと思います。http://d.hatena.ne.jp/K_NATSUBA/20060104ここでのコメントで、読者批判がしたいのでは?とかか…

再度「Gunslinger Girl」について・1

この漫画をはじめて読んだのは確か連載第二話目のリコのエピソードで、電撃大王に載っているのを某人に読めといわれたからだった。第一印象からいわくいいがたい違和感を覚えた。その次は確かフランカがスペイン広場でヘンリエッタと遭遇するエピソードで、…