「壁の中」から

むかしblogtribeにあったやつのアーカイブ

2004-01-01から1年間の記事一覧

第三回文学フリマの同人誌感想「残心」「短編連作『幻魚水想記』

文芸白菜「残心」 和綴じ本でかなり凝った作りをしており、手間がかかっているのにもかかわらず二百円という値段だったため、その場で買ってみた。貸していて、ちょっと今手元にないので写真はなし。東洋大学の文芸サークルとのこと。三篇の小説が収められて…

第三回文学フリマの同人誌感想「Ultra Sonic Bicycle」「零文学」

お隣さん第二弾。 エキゾチックケッタマシーン「Ultra Sonic Bicycle」 こちらは文庫本サイズで、きちんとカバーまでついている。60ページの本なのでカバーがちょっとあまり気味なのはご愛敬(薄い岩波文庫を思い出す)。ただ、本文の字組が読みづらい。字そ…

第三回文学フリマの同人誌感想「早大文学」「太平洋プロジェクト」

文学フリマでは、かなり目立っていた東浩紀、大塚英志的な文脈のものやはてなダイアリー系のものは避けて同人誌を買った。文学フリマの素性からしてそういうものが目立つのは当然だけれど、まあ、ひねくれてみた。全く知らない人の創作小説とかをできるだけ…

第三回文学フリマ終了

サークル初結成、即売会初参加だった第三回文学フリマ開催終了。 今回はほとんど告知もなく、著名人がいるわけでもない状況でおおよそ二十部売れました。 買っていった皆様、改めてどうもありがとうございます(とはいっても、ここを見ていない気が)。 六十…

明日は文学フリマです

同人誌が到着した。結構イメージ通りの出来か。 二千いくらか上乗せして特色印刷してもらっただけはある。 黒ベタがはげてしまっているものは会場に持っていかないでストックしておくことに。 約十キロの六十数部。注文部数は五十部だったのだけれど、なぜか…

第三回文学フリマ

もうちょっと早く告知するべきだったのだけれど、十四日秋葉原で行われる第三回文学フリマに参加します。私と同じ大学の小説書き同士で作った「幻視社」という即席サークルです。サークルのページがありますので、興味のある方は、文学フリマのサイト共々の…

「野川」の書評について補足

「情況」は新号が出ていて、「暴力の哲学」特集を買い逃してしまった。うーん。 情況出版のウェブサイトは更新が半年以上止まっているし。そうまでして買うに足る 内容かどうかもわからないし、ちょっと保留か。ところで、古井由吉「野川」は売れ行きも含め…

文学とはひとつの健康の企てである

ちょうど二週間更新をサボっていたことになる。 他に忙しい用事ができたり、いろいろ遊び歩いていたせいで、最近あまりものを読んでいない。そうはいっても、後藤明生の「疑問符で終る話」を読んだり、芳川泰久「書くことの戦場」をもう一度読み返したりして…

「群像」の「『ドン・キホーテ』私註」

本屋を軽くめぐる。高い本を買う金はないので、文庫をちょっと買って、あとは見るだけ。まず笙野頼子の「金毘羅」を手に取ってみる。いつものミルキィ・イソベの装丁で、格好いい。「太陽の巫女」の装丁を下敷きにしているとおぼしき太陽のマークが見える。…

古井由吉「仮往生伝試文」河出書房新社

仮往生伝試文作者: 古井由吉出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1989/10メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (2件) を見る中村びわさんのブログ「◆〓本のシャワーにさらす肌〓◆」で知ったのだけれど、古井由吉「仮往生伝試文」が河出書房新社より…

昨日の付録

昨日触れた本に適当にリンク。画像がないのが多い。amazonの画像を使おうと言うときに、このブログのシステムはかなり使いづらい。一つ選択すると、そのウィンドウが閉じてしまうので、複数の本を検索したいときには使えないし、元々使い勝手の悪いamazon検…

泥沼式のアミダクジ式

ここ何日か気分次第でいろいろ読んではいるのだけれど、書こうとすると面倒くさくなってしまうのがいつものくせで、書こうとすることが溜まっていくうちに、それがうっとうしくなってやめてしまうことが多い。 たとえば、「八月/愚者の時間」を読んでいると…

三者の後藤明生論

前回のエントリで乾口達司氏の論へリンクを張るのを忘れていた(さっき修正した)。 リンクしたのは下の後藤明生論。後藤明生と「敗戦体験」-同化と拒絶のはざまで- 乾口達司氏は近畿大で学び、後藤明生から直接教えを受けた学生だったらしい。オフィシャル…

後藤明生「八月/愚者の時間」3

●テクスト遍歴への移行「針目城」は「針目城といっても誰も知らないと思う。実はわたしも、『筑前国続風土記』ではじめて知ったのである」と書き出されている。ここでもうすでに、前三作とは小説の書かれ方が異なっていることがわかる。「綾の鼓」などでは、…

後藤明生「八月/愚者の時間」2

●引用が始まる後半の短篇群は五つあり、一番最初の「愚者の時間」は、九州での友人Tから、筑前邪馬台国説を論じた本を送られたことから書き出されている。自分の筑前「帰省」と、友人Tの思い出などを語りながら、植民地暮らしの人間が筑前に馴染みきれない…

後藤明生「八月/愚者の時間」作品社

八月・愚者の時間 (1980年)作者: 後藤明生出版社/メーカー: 作品社発売日: 1980/04メディア: ?購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る●後藤明生の朝倉この作品集は、前半と後半で分けられていて、それぞれ趣のちがう短篇が並べられている…

後藤明生「壁の中」・5

ドストエフスキーのペテルブルグ (都市のジャーナリズム)作者: 後藤明生出版社/メーカー: 三省堂発売日: 1987/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る太宰治全集〈2〉 (ちくま文庫)作者: 太宰治出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1988/09/01メ…

ブックマークを更新

●疲れた。「壁の中」についてだけで四十枚近く書いていた。しかも、同じことの繰り返しと、纏め切れていない論旨。卒論を提出したとき、教授に、論文と言うよりはエッセイのようだというようなことを言われた覚えがあるが、昨日のもそんな感じに終わっている…

後藤明生「壁の中」・4

●近代文学の分裂この小説(というより後藤明生)が一貫して喚起しようとしているのは、日本近代が「分裂」であったということである。ロシア文学それもドストエフスキーを特に持ち出して示そうとしているのは、ロシアの知識人がヨーロッパの知識を吸収したた…

後藤明生「壁の中」・3

●個人主義者荷風やっと読み終わる。後半部分は永井荷風を架空の対談者に仕立てて、本人の前で永井荷風にまつわるさまざまな謎を追っていくという奇抜なもの。その荷風の謎、というのも多岐に渡り、かなり細かいところに踏み込んだ議論になっている。とはいっ…

スティーブン・ミルハウザー「エドウィン・マルハウス」

エドウィン・マルハウス―あるアメリカ作家の生と死作者: スティーヴンミルハウザー,Steven Millhauser,岸本佐知子出版社/メーカー: 白水社発売日: 2003/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (41件) を見るデビュー作にして代表…

後藤明生「壁の中」つづき

●「贋地下室」昨日のを読み返してみるといってることがバラバラで意味不明っぽい。纏めなおしてみる。ドストエフスキー「地下生活者の手記」という作品は、ゴーゴリ「外套」の九等官が、六千ルーブリ(十年間暮らせる金)を得たことで現実世界のリアリズムか…

後藤明生「壁の中」

壁の中作者: 後藤明生出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1986/03メディア: 単行本 クリック: 27回この商品を含むブログ (5件) を見る後藤明生が延々五年間文芸誌に連載し続けた1700枚の長篇小説。 二部構成で、第一部では大学講師の生活と、友人Mにむけた…