「壁の中」から

むかしblogtribeにあったやつのアーカイブ

後藤明生

後藤明生コーナー

そういえば、 幻視社のサイトの方に 後藤明生レビューのコーナーをアップした。とりあえずメモ書きくらいしかないけれど、量だけはあるので、興味のある方は見てみてください。このブログから転載したのも合わせると、百五十枚は下らないと思います。まあ、…

文学とはひとつの健康の企てである

ちょうど二週間更新をサボっていたことになる。 他に忙しい用事ができたり、いろいろ遊び歩いていたせいで、最近あまりものを読んでいない。そうはいっても、後藤明生の「疑問符で終る話」を読んだり、芳川泰久「書くことの戦場」をもう一度読み返したりして…

泥沼式のアミダクジ式

ここ何日か気分次第でいろいろ読んではいるのだけれど、書こうとすると面倒くさくなってしまうのがいつものくせで、書こうとすることが溜まっていくうちに、それがうっとうしくなってやめてしまうことが多い。 たとえば、「八月/愚者の時間」を読んでいると…

三者の後藤明生論

前回のエントリで乾口達司氏の論へリンクを張るのを忘れていた(さっき修正した)。 リンクしたのは下の後藤明生論。後藤明生と「敗戦体験」-同化と拒絶のはざまで- 乾口達司氏は近畿大で学び、後藤明生から直接教えを受けた学生だったらしい。オフィシャル…

後藤明生「八月/愚者の時間」3

●テクスト遍歴への移行「針目城」は「針目城といっても誰も知らないと思う。実はわたしも、『筑前国続風土記』ではじめて知ったのである」と書き出されている。ここでもうすでに、前三作とは小説の書かれ方が異なっていることがわかる。「綾の鼓」などでは、…

後藤明生「八月/愚者の時間」2

●引用が始まる後半の短篇群は五つあり、一番最初の「愚者の時間」は、九州での友人Tから、筑前邪馬台国説を論じた本を送られたことから書き出されている。自分の筑前「帰省」と、友人Tの思い出などを語りながら、植民地暮らしの人間が筑前に馴染みきれない…

後藤明生「八月/愚者の時間」作品社

八月・愚者の時間 (1980年)作者: 後藤明生出版社/メーカー: 作品社発売日: 1980/04メディア: ?購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る●後藤明生の朝倉この作品集は、前半と後半で分けられていて、それぞれ趣のちがう短篇が並べられている…

後藤明生「壁の中」・5

ドストエフスキーのペテルブルグ (都市のジャーナリズム)作者: 後藤明生出版社/メーカー: 三省堂発売日: 1987/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る太宰治全集〈2〉 (ちくま文庫)作者: 太宰治出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1988/09/01メ…

後藤明生「壁の中」・4

●近代文学の分裂この小説(というより後藤明生)が一貫して喚起しようとしているのは、日本近代が「分裂」であったということである。ロシア文学それもドストエフスキーを特に持ち出して示そうとしているのは、ロシアの知識人がヨーロッパの知識を吸収したた…

後藤明生「壁の中」・3

●個人主義者荷風やっと読み終わる。後半部分は永井荷風を架空の対談者に仕立てて、本人の前で永井荷風にまつわるさまざまな謎を追っていくという奇抜なもの。その荷風の謎、というのも多岐に渡り、かなり細かいところに踏み込んだ議論になっている。とはいっ…

後藤明生「壁の中」つづき

●「贋地下室」昨日のを読み返してみるといってることがバラバラで意味不明っぽい。纏めなおしてみる。ドストエフスキー「地下生活者の手記」という作品は、ゴーゴリ「外套」の九等官が、六千ルーブリ(十年間暮らせる金)を得たことで現実世界のリアリズムか…

後藤明生「壁の中」

壁の中作者: 後藤明生出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1986/03メディア: 単行本 クリック: 27回この商品を含むブログ (5件) を見る後藤明生が延々五年間文芸誌に連載し続けた1700枚の長篇小説。 二部構成で、第一部では大学講師の生活と、友人Mにむけた…