プリースト、ヴォネガット
- 作者: クリストファープリースト,Christopher Priest,古沢嘉通
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/01/01
- メディア: 文庫
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この本は数年前に読んでかなり驚かされた小説。とりあえず傑作。個人的に「奇術師」より面白い。
「魔法」はそれまでジャンルSF作家だったプリーストが新境地を開いたもので、是非ともこの手のやつが続々と訳されることを願っていたのだけれど、翻訳はぱたりと途絶えていた。上の邦訳書とここのプリースト著作一覧を見比べてもらえばわかるように、「魔法」以降の非SF作品の翻訳はまったくない。ジャンル作家としての受け皿がなくなり、翻訳されなくなったようだ。
今回「奇術師」が訳され(ファンタジイとして)、訳者が驚くほどの好評を得、プリーストの八十年代以降の作品の翻訳に道を開いた、かも知れない。「奇術師」がこれほど好評なのはおそらく、「ミステリ」として受け取られているせいだというのは、訳者 古沢嘉通氏のサイトにある メモの上部にある
ミステリチャンネル 闘うベストテン 第1位 IN☆POCKET文庫翻訳ミステリー 総合第3位 週刊文春ミステリーベスト10 第5位 このミステリーがすごい! 第10位 |
軽くレビュー。
「魔法」は訳者もいうとおり「南仏プロヴァンスの恋」とでもいうような恋愛物語が、語り=騙りの驚くべき反転によってひっくり返される傑作。「奇術師」がそうだったように、物語の妙味と現代文学的なナラティヴの方法、そしてSF出身らしい道具立てがミックスされた、サービス精神溢れた小説。「奇術師」にニコラ・テスラが出てきたのににやりとした人は、この「魔法」も楽しめるはず。そのうち文庫版を買って読み直してみるつもり。
- 作者: クリストファー・プリースト,中村保男
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1979/07
- メディア: 文庫
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- 作者: クリストファー・プリースト,中村保男
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1978/04
- メディア: 文庫
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- 作者: クリストファープリースト,Christopher Priest,安田均
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1996/05/18
- メディア: 文庫
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- 作者: クリストファー・プリースト,鈴木博
- 出版社/メーカー: サンリオ
- 発売日: 1980/05
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- 作者: クリストファープリースト,安田均
- 出版社/メーカー: サンリオ
- 発売日: 1987/03
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イギリスSFはバラード、プリースト、ベイリーと好きな作家が多く、ディッシュやワトスンなんか、サンリオで出ていた文庫は全部持っているのだけれど、あいにく全然手をつけていない。「エンベディング」や「アジアの岸辺」を先に読んでしまいそう。
中村びわさんのブログでも触れられていたけれど、ヴォネガットの「プレイヤー・ピアノ」が改版して重版するらしい。現物を見てないので何とも言えないけれど、なぜ重版でなく、新しい番号を振って再発売しているのだろう。
旧「プレイヤー・ピアノ」
新「プレイヤー・ピアノ」
まだ版の切れてない作品をわざわざ改版する前に、「母なる夜」「ジェイルバード」「スラップスティック」「デッドアイ・ディック」「ガラパゴスの箱舟」の長篇群とか、二分冊で両方品切れの短篇集「モンキーハウスへようこそ」とか、エッセイ集三冊とか、重版すべき本がいくらでもあるじゃないか。違う版にする理由があるんだろうか。ヴォネガットの邦訳された本のうち「死よりも悪い運命」だけは持ってないので、文庫にでもして欲しいのだけれど。
それはさておきヴォネガットの第一長篇「プレイヤー・ピアノ」は、個人的にはとても好きな作品。その後の「スローターハウス5」や「タイタンの妖女」などのように、錯時法を駆使するわけでもなく、荒唐無稽な宇宙人とかが出てくるわけでもない、かなりまっとうな主流小説に近い近未来SFなのだけれど、しみじみと良いと言える作品。機械化の波に押されて労働者の仕事が減っていくという、設定はありがちなディストピアものなのだけれど、突飛すぎないレベルで抑えられていて、ヴォネガットの苦いユーモアも光る。この作品では女性の書き方がとても印象に残っている。唯一女が書けるSF作家、というのは誰がいったのか忘れたが、確かに、と思える。SFを読み慣れていない人は、一番最初にこれを読むと良いんじゃないかと思う。普通の小説に一番近い。
ラストシーンがいい。台詞覚えてるくらい。